NHK2020応援ソングである、米津玄師作詞作曲の楽曲「パプリカ」。この曲のMVに原爆の子が登場しているのではないか、といウワサが広まっています。
この曲には本当に平和を願う裏のメッセージが込められているのか。考えてみたいと思います。
・子供向けの曲だった
パプリカは元々子供向けの楽曲で、米津玄師がプロデュースを務めた「Foorin」という子供グループが歌っている曲です。
2018年から公開されたこの曲は明るく可愛らしい印象で、「お母さんといっしょ」が放送される時間帯に繰り返し放送され話題となり、子供たちの間で人気になり、今では運動会などで使われたりすっかり定着した楽曲となりました。
・大人のパプリカ
そんな子供向けの曲だと思われていたこの曲ですが、2019年8月9日に米津玄師本人が歌うパプリカのMVが公開されました。
8月のNHKみんなのうたにも起用され大変話題となっています。
※こちらはNHKが公開しているショートバージョンのMVです。
子供Ver.とは雰囲気が変わり、スローテンポでしっとり切なく米津玄師の声が響き渡ります。
また、MVの映像は「Foorin」のジャケットを描いた加藤隆氏が担当、何か訴えかけるものがあるのではないかと感じさせてくれるノスタルジックな内容になっています。
・MVに出てくる少女

ウワサになっているのは、赤いマントをつけた少女。彼女が動画の中でするポーズ(上の動画の1:20頃)が、広島平和記念公園にある原爆の子の像とポーズと非常に似ているという点です。
・平和を願う千羽鶴
また、動画の少女の周りで沢山の鶴が飛び立つ描写があり、それが原爆の子の像のモデルとなった佐々木禎子さんの千羽鶴のエピソードと重なります。
佐々木禎子さんは2歳の時に爆心地から1.7mのところで被爆し、その後首にしこりを生じたのがきっかけで亜急性リンパ腺白血病と診断され12歳で亡くなられました。その際に日本中から彼女の回復を願い折り鶴が贈られ、その数は1000羽を超えました。
参考
佐々木禎子さんと原爆の子の像 | ヒロシマ平和メディアセンター
企画展2 - 広島平和記念資料館
・羽ばたく少女
動画の中で少女は手を取りのように羽ばたかせ、鶴と一緒に空を舞う描写があります。元気な笑顔でどこに向かって飛んでいるのでしょうか。
・少女だけ大人にならない
MVを見ていると、赤いマントの少女と共に遊ぶ男の子と女の子の二人は成長していきます。でも少女は小さいままです。生きている二人と違い体が成長することがないということを連想させるシーンです。
上の動画は2番も含まれているフルバージョンのMVです。もう一度視聴し、じっくりと聴いてみてください。
・赤ちゃんに微笑む少女
動画1:30頃、家に訪れて、生まれた赤ちゃんに笑顔で寄り添う少女。小さな命がこれからたくさんの愛に包まれ育っていくのを喜んでいる、見守っているようです。
・お父さんの姿がない
1:28頃、縁側に座る家族、赤ちゃんを抱いた母親の隣に座っているのは父親にしては歳を取っている気がします。また、1:30のシーンではおばあちゃんが映っているので成人男性はおそらく赤ちゃんのおじいちゃん。お父さんはどこにいったのでしょうか。
・雨の中悲しむ女の子
少し巻き戻って、1:20頃、二番の歌い出しで、雨の中しゃがみ込む女の子を連れて帰る男の子が描かれています。辛いことがあったのか、昔のことを思い出したのか、落ち込んでいるのでしょう。
歌詞にはそのあと「ひとりひとりなぐさめるように、誰かが呼んでいる」とあり、赤いマントの少女が家族を横切ります。なので、「誰か」というのは少女のことで、家族を見守り励ましているのではないかと想像できます。
・おじいちゃんの手にはバケツ
1:30頃、家族が一列に並び歩いているシーンで、おじいちゃんがケツを持っています。もしかして誰かのお墓参りに行ったのかもしれないと想像できるシーンです。
歌詞には「帰り道」とあり、帰り道に見えた「思い出の影法師」が少女であり、笑顔で飛んでいくので、希望のような意味が込められているのではと想像できます。
・赤いマントは防空頭巾?
こちらはハッキリしませんが、そのような意見もネット上でチラホラ見受けられました。セーラー服のような姿なのも、この時代学校の制服はどこもセーラー服だったこともあり、どこか懐かしさを感じさせます。
・手にはいっぱいの花
2:20頃、大きくなった2人がいっぱいの花をもって少女に会いに行きます。小さい頃も花を持っているという描写が重なるので、今も昔も変わらずに、少女のことを忘れていないという意味合いが込められているように思います。
また、「たくさん」の花という点や花火や彼岸花がたくさん描かれていることから、少女一人だけでなく、沢山の命が対象だということが連想できます。
・動画公開日は8月9日

8月9日は長崎の原爆が投下された日です。MVに出てくる街の景色を見ると港があり、どこか長崎に似ている気がします。
建っている建物を見ると少し今よりも前の年代を描いていると予想できます。ですが、動画1:11頃映る山に立ち並ぶビルはどういう意味なのか、というのが気になります。未来の日本を見ているということなのでしょうか。
・三線の音
間奏部分の「愛に行くよ~並木をぬけて」と歌うところの後半、かすかに三線の音が鳴っています。三線は沖縄の楽器です。沖縄戦とも少しリンクしているのかもしれないと思いました。
・花火が彼岸花

2:00頃からの花火があがるシーンでは、彼岸花を連想させるような色と形をしています。花ことばには「再会」「悲しい思い出」などがありますが、彼岸花を見ると何か切ない気持ちになります。
・平和を願って

動画制作者の加藤隆氏は幼少期の「ボク」と「風の子」との思い出を回想する形で動画にしたものとおっしゃっており、米津玄師氏からもとくにコメントはありません。
ですので今回考察した点が、実際どうなのかはわかりません。
ですが平和へのメッセージが込められているのではないかという視点でこのMVを改めて見ると目頭が熱くなり、こみ上げてくる想いがありました。
今も風の子は、子供たちの平和を願いながらどこかで見守っているのかもしれません。
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